DrupalConってなに?

DrupalCon(ドゥルーパルコン) は、オープンソースCMS「Drupal」の公式グローバルカンファレンスです。
世界各地で定期的に開催され、Drupalのコア開発者、コントリビューター、制作会社、エンタープライズユーザーなどが集まります。
DrupalConでは、以下のようなテーマが扱われます。

  • Drupal本体の最新動向・ロードマップ
  • 大規模・エンタープライズサイトの事例紹介
  • 周辺技術(AI、Drupal Canvas、フロントエンド、DX など)
  • コミュニティ活動やコントリビューション

単なる技術カンファレンスではなく、
「Drupalを取り巻くエコシステム全体を共有し、方向性を確認する場」
という位置づけのイベントです。

今回の DrupalCon Nara 2025 は、日本で開催される非常に貴重な回であり、国内外から多くのDrupal関係者が奈良に集結しました。

Dries Buytaert キーノート(Q&A)から見えるDrupalの方向性

今回のDrupalCon Nara 2025では、Drupal創設者であるDries Buytaert(ドリス・バイタート) によるキーノートが、従来のプレゼン形式ではなく Q&A形式(対話型) で行われました。
このキーノートは、今回のDrupalCon全体を理解するうえで非常に象徴的な位置づけ だったと感じています。

キーノートで語られた主なポイント

DriesのQ&Aでは、以下のようなキーワード・テーマが繰り返し登場しました。

  • Drupal Canvas
    • ノーコード/ローコードに近い体験を実現する新しいビジュアル編集基盤
    • 編集者体験(DX)を大きく変える取り組み
  • Site Templates / Marketplace
    • サイトテンプレートを共有・再利用できるマーケットプレイス構想
    • Drupalを「作るもの」から「選んで始めるもの」へ
  • AIとDrupal
    • AIは置き換えではなく、編集・運用を支援する存在
    • CMSの価値を高めるための補助的な役割
  • Digital Sovereignty(デジタル主権)
    • オープンソースであるDrupalの意義
    • ガバナンスやベンダーロックイン回避への関心の高まり

これらの内容から、Drupalが AI時代における「エンタープライズ向けコンテンツ基盤」へ進化しようとしている という明確な意思を感じました。

DrupalCon Nara 2025 全体の雰囲気

公式サイトやスケジュールを通して見ても、今回のDrupalCon Nara 2025は、
「グローバルイベント感」以上に「AIとDX」を強く意識した構成 が特徴的でした。
特に目立っていたのは、

  • AIを前提としたCMSの進化
  • Drupal Canvasによる編集体験の刷新
  • テンプレートや再利用を前提とした開発スタイル
  • 運用・ガバナンスまで含めたCMS設計

といったテーマです。

Drupalというプラットフォームが、AI時代にどう進化し、どう使われていくのかという問いが、イベント全体を貫いていました。

印象に残ったトピック・セッション

Drupal × AI(実用フェーズへの移行)

今回のプログラムを俯瞰して特に印象的だったのは、AIが「試してみる技術」ではなく、実用フェーズとして語られていた 点です。
多くのセッションで共通していた視点として、

  • AIは「何でも自動化する魔法」ではない
  • 編集者・運用者の負担を減らすための現実的な活用
  • 判断は人が行い、AIはそれを支援する

といった、非常に現実的なスタンスが共有されていました。

編集体験(DX)と Drupal Canvas

AI関連の話題と並んで強く印象に残ったのが、編集者体験(DX)と Drupal Canvas に関するセッションです。

  • ビジュアルベースでのページ構築
  • 開発者に依存しすぎない編集フロー
  • エンタープライズ環境でも耐えうるガバナンス設計

Drupalを「開発者向けCMS」としてだけでなく、
実際に日々触る編集者・運用担当を中心に再設計しようとしている
という意思を感じました。

Site Templates / Marketplace という発想

もうひとつ印象的だったのが、
Site Templates や Marketplace というキーワードです。

  • 一から作るのではなく「選んで始める」
  • 成功パターンを再利用する
  • エージェンシー・コミュニティの知見を資産化する

これは、Drupalが より導入しやすく、より広い層に届くCMSへ変わろうとしている ことを示しているように感じました。

参加して感じたこと(所感)

DrupalCon Nara 2025を通して感じたのは、

  • Drupalは「CMS」からAI時代のコンテンツ基盤へ進化しようとしていること
  • AI、Canvas、Marketplaceといった要素がバラバラではなく、ひとつの方向性として整理されていること

です。
エンタープライズ案件や長期運用を前提としたWebサイトにおいて、
この「現実的かつ段階的な進化」は、
日本の企業Webとも非常に相性が良いと感じました。

まとめ

DrupalCon Nara 2025は、

  • Drupalの最新動向を知る場であると同時に
  • Drupal Canvas・Marketplace・AI を軸とした次の進化
  • Drupal × AI の現在地
  • 日本だけに留まらない グローバルなDrupalの潮流

を確認できるイベントだったと感じています。

日本でDrupalを使っている方、これから導入を検討している方にとっても、
「AI時代におけるDrupalの立ち位置」を考える良いきっかけになるのではないでしょうか。