※本記事は2026年9月時点の情報です。Drupal 12は開発中のため、正式リリースまでに仕様が変わる可能性があります。

まずは2つの期日を押さえる

2026年12月は、Drupalを使っている企業にとって節目の月になります。
1週間のうちに、性質の違う2つの出来事が重なるためです。

2026年12月7日の週:Drupal 12リリース

Drupal 12.0.0は2026年12月7日の週にリリース予定です。
すでにベータ版(12.0.0-beta1)が公開されており、リリース候補版(RC)は11月9日の週に予定されています。

あわせて同じ週にDrupal 11.5.0 もリリースされます。ここが重要で、「Drupal 12が出る=Drupal 11が終わる」ではありません。

2026年12月9日:Drupal 10サポート終了

一方でDrupal 10は2026年12月9日にサポート終了(EOL)を迎えます。10.6.xがDrupal 10最後のマイナーバージョンで、この日以降はセキュリティリリースも提供されません。

そしてもうひとつ、見落とされがちな事実があります。
Drupal 11.3.x も、12.0.0がリリースされる同じ週にセキュリティサポートが終了します。さらにDrupal 11.2.x は、2026年6月の11.4.0リリース時点ですでにサポートが切れています。「11だから当面は安心」とは限りません。

つまり、いま急ぐべきなのはDrupal 12への移行ではなく、サポートが切れるバージョンから抜け出すことです。この違いを最初に押さえておくと、この後の判断がぶれません。

✅ ポイント:期限が決まっているのは「Drupal 12が出ること」ではなく、Drupal 10と11.3のサポートが終わることです。

Drupal 12で変わること

では、その先にあるDrupal 12では何が変わるのか。ベータ版のリリースノートで公表されている内容から、運用中のサイトに影響が大きいものを順に見ていきます。

PHP 8.5が必須になる

Drupal 12の動作要件はPHP 8.5以上です。この方針は2026年1月にコアへコミット済みで、変更される可能性は低いと考えてよいでしょう。

あわせてデータベースの要件も上がります。

  • MySQL 8.0 以上
  • MariaDB 10.11 以上
  • PostgreSQL 19 以上
  • SQLite 3.45 以上(json1拡張が必要)

内部で使われているライブラリも、Guzzle 8.0・PHPUnit 12.5と大きく世代が上がります。
ここで注意したいのは、PHPのバージョンはDrupalだけの都合では決められないという点です。共用サーバーやマネージドサービスをお使いの場合、そもそもPHP 8.5が提供されているかどうかを先に確認しておく必要があります。

コアから9つのモジュールと3つのテーマが削除される

おそらく実務上いちばん影響が大きいのがこれです。Drupal 12では、以下がコアから削除され、コントリビュートプロジェクト(Drupalのオープンソースコミュニティが提供するモジュール・テーマ)へ移されます。

モジュール(9つ)

  • Ban
  • Contact
  • Field Layout
  • History
  • Search
  • Settings Tray
  • Shortcut
  • Telephone
  • Toolbar

テーマ(3つ)

  • Claro
  • Stable 9
  • Olivero

この一覧を見て「うちは関係ない」と思われた方は、一度管理画面の「拡張機能」を開いてみてください。
特にSearch(コアの検索機能)、Toolbar(管理画面上部のツールバー)、Olivero(Drupal 10/11の標準フロントエンドテーマ)は、意識せず使っているサイトが少なくありません。Contact(問い合わせフォーム)にいたっては、コーポレートサイトの問い合わせ導線そのものに使われているケースがあります。

ここで作業手順に注意が必要です。公式のリリースノートでは、アップグレード前に「不要ならアンインストールする」か「必要ならコントリビュート版をComposerの依存に追加する」のどちらかを済ませておくよう案内されています。
サイトに必要な機能を安易にアンインストールしてしまうと、そのモジュールの設定とデータが失われます。使い続けるものは、必ずコントリビュート版を先に入れてください。

✅ ポイント:まず「有効になっているモジュール・テーマの一覧」を書き出し、この12個と突き合わせる。これだけで、自社サイトの影響度がかなり具体的に見えてきます。

管理画面のテーマが入れ替わる

Drupal 11.4で実験的機能として追加されたDefault Admin テーマが、Drupal 12で正式版となり、これまで標準だったClaroを置き換えます。Claroはコアから外れ、コントリビュートプロジェクトへ移動します。

見た目が変わるだけと捉えられがちですが、影響が出るのは次のようなケースです。

  • 管理画面にカスタムCSSを当てている
  • Claro前提でサブテーマを作っている
  • 管理画面の操作手順書・マニュアルを社内で配布している

特に最後の「マニュアル」は見落としがちです。運用担当者向けの手順書をお持ちの場合、画面キャプチャの撮り直しが必要になる可能性があります。

パスワードのハッシュ方式がargon2idに

Drupal 12では、パスワードのハッシュ方式の既定値がargon2idに変わります。セキュリティ面では望ましい変更です。
argon2が利用できない環境など、どうしても都合が悪い場合は、カーネルパラメータでPHP標準のアルゴリズム(bcrypt)に切り替えることもできます。外部の認証システムと連携している場合は、挙動を一度確認しておくと安心です。

そのほかの変更

細かいところでは、以下も押さえておきたい変更です。

  • Migrate Drupal / Migrate Drupal UI がコアから削除され、コントリビュート版も用意されない
  • Syndicate ブロック(RSSアイコン)が削除。配置済みの設定もアップデート時に消える
  • Windowsでの本番ホスティングが非推奨に。Windowsサーバーを使う場合は Linux on Windows の利用が推奨される
  • Filterの許可HTML設定がアルファベット順にソートされる(設定をエクスポートすると差分に出る)
  • ファイル名に含まれる危険な文字(シェルのメタ文字など)がアンダースコアに置換される
  • htmx が 2.0 から 4.0 へ。後方互換性のない変更を含む
  • Backbone.js・Underscore.js といった古いJavaScriptライブラリがコアから外れる

1つ目について補足します。Drupal 6やDrupal 7からの移行機能はDrupal 12には残りません。公式には「まずDrupal 11へ移行し、その後Drupal 12へアップデートする」という手順が案内されています。なお、Migrate API自体はコアに残ります。

最後の項目は、カスタムテーマやカスタムモジュールでこれらを暗黙的に使っている場合に影響します。自前のJSがコア同梱のライブラリに依存していないか、確認しておきましょう。

見落としやすい前提:Drupal 11を経由しないと上げられない

ここが今回いちばんお伝えしたい点です。

Drupal 12では、11.3.0より前に追加されたアップデートパスが削除されています。公式のリリースノートには、Drupal 11.2以前からの更新は、アップデートシステムが拒否すると明記されています。そのうえで、最低でも11.4(11.5がリリースされればそちら)まで上げてからアップグレードすることが推奨されています。

これが何を意味するか。
いまDrupal 10で運用しているサイトは、「10 → 12」と一足飛びには行けません。必ず「10 → 11.4/11.5 → 12」の二段構えになります。

以前の記事「Drupal 11対応前に知っておきたい『CMSアップデート失敗の典型例』」でも書きましたが、アップデートの失敗は技術的な難しさよりも計画の立て方で起きます。「12が出てから一気にやろう」と考えていると、この前提だけでスケジュールが1段階分ずれます。

✅ ポイント:Drupal 10のサイトは、12月を待つ理由がありません。いまDrupal 11に上げておくこと自体が、Drupal 12への準備になります。

今のバージョン別・これからの進み方

ここまでを踏まえて、現在のバージョン別に整理します。

Drupal 10で運用している場合

最優先です。12月9日でセキュリティリリースが止まります。
年内にDrupal 11.4以上へ移行することを目標に、いますぐ計画を立ててください。具体的な手順は「Drupal 11アップグレード完全ガイド」にまとめています。

Drupal 12への移行は、その後で落ち着いて検討すれば問題ありません。

Drupal 11.2以下で運用している場合

こちらも最優先です。11.2.xのセキュリティサポートは2026年6月にすでに終了しています。
加えて、この状態からはDrupal 12へのアップデート自体が拒否されます。まず11.4以上へ上げてください。

Drupal 11.3で運用している場合

12.0.0がリリースされる12月7日の週で、セキュリティサポートが終了します。Drupal 10と同じタイミングです。
マイナーバージョンのアップデートは通常それほど大きな作業にはなりませんので、年内に11.4、できれば11.5まで上げておくのが合理的です。

Drupal 11.4以上で運用している場合

移行の前提はクリアしています。あとはDrupal 12そのものへの対応で、確認すべきは次の3点です。

  • サーバーがPHP 8.5に対応できるか
  • 削除される9モジュール・3テーマを使っていないか
  • 使用中のコントリビュートモジュールがDrupal 12に対応しているか

なお、リリース直後のメジャーバージョンへ急いで上げる必要はありません。コントリビュートモジュールの対応が揃うまで、少し様子を見るという判断も十分に現実的です。

12月までにやっておきたいこと

いまの時点で着手できることを、優先度順に挙げます。

  • 現在のDrupalバージョンとPHPバージョンを確認する
    「ステータスレポート」画面で確認できます。まずここが出発点です。
  • 有効なモジュール・テーマの一覧を書き出す
    削除される12個、およびDrupal 12未対応のコントリビュートモジュールがないかを突き合わせます。残すものはコントリビュート版をComposerに追加してから進めます。
  • サーバーのPHP 8.5対応予定を確認する
    ホスティング事業者の対応時期によっては、Drupal側の計画を組み直す必要が出てきます。
  • 予算と実施時期を先に押さえる
    緊急対応になった瞬間にコストは跳ね上がります。計画的に進めることが、いちばんの費用対策です。

まとめ

整理すると、今回のポイントは3つです。

  • 期限が決まっているのはDrupal 10(12月9日)とDrupal 11.3(12月7日の週)のサポート終了
  • Drupal 12ではPHP 8.5必須・コアから9モジュール3テーマが削除・管理テーマが入れ替わる
  • Drupal 12へはDrupal 11を経由する必要がある(11.2以前からは更新を拒否され、11.4以上が推奨)

Drupal 10をお使いであれば、答えはシンプルです。
いまDrupal 11に上げること。それが同時に、Drupal 12への準備にもなります。

弊社ではこれまで数多くのDrupalサイトのバージョン移行を手がけてきました。現状診断によるリスクの洗い出しから、無理のない移行計画の立案、本番リリースまでの伴走まで対応しています。

「うちのサイトは何から手を付ければいいのか」という段階でも構いません。お気軽にお問い合わせください。