ウェブアクセシビリティとは?
ウェブアクセシビリティとは、障害の有無に関わらず、すべての人がウェブサイトの情報やサービスを公平に利用できるようにすることを目的とした設計の考え方です。視覚障害、聴覚障害、運動障害、認知障害など、さまざまな障害を持つユーザーに配慮し、ウェブサイトを利用しやすくすることが重要です。 ウェブアクセシビリティを実現するためには、ウェブコンテンツの作成時に一定の基準を満たす必要があります。代表的な基準としてWCAG(Web Content Accessibility Guidelines)があり、この基準に沿ってウェブサイトを設計することが推奨されています。
ウェブアクセシビリティ義務化の背景
2024年4月、日本でウェブアクセシビリティへの対応が義務化されました。この背景には、障害者の権利に関する条約(障害者権利条約)の批准があります。日本は2014年に同条約を批准し、障害者の情報アクセシビリティ権を保障する義務を負いました。
また、高齢化が進む日本社会において、ウェブアクセシビリティの重要性が高まっています。高齢者の多くが何らかの障害を抱えており、ウェブサイトを利用する際の配慮が必要不可欠です。
さらに、ウェブアクセシビリティを確保することで、障害の有無に関わらずすべてのユーザーが恩恵を受けられます。例えば、視覚障害者向けの代替テキストは、スマートフォンなどの小さな画面でも役立ちます。
Drupalでのウェブアクセシビリティ
Drupalのウェブアクセシビリティ機能は、Drupal7では導入段階にありました。しかし、2015年のDrupal8の登場以降、ウェブアクセシビリティは最優先事項として対応が進み、Drupal9アップデートにより、アクセシビリティを含めコア機能が大幅に向上しました。
現在、Drupal コアには、ウェブサイトがWCAG 2.1、2.2、および3 の要件を満たすためのベース機能とガイドラインが含まれています。
例)
・画像の代替テキストの提供
・セマンティック HTML 構造の作成
・キーボード ナビゲーション サポートの実装
・読みやすさのための色のコントラスト
Drupalに標準搭載されているアクセシビリティ機能
Drupalには、アクセシビリティに優れたウェブサイトを作成するための標準機能が搭載されています。これらは Drupalのコアに含まれており、能力に関係なく誰もがウェブサイトを利用できるようにすることに重点を置いています。
Drupal に組み込まれている主要なアクセシビリティ機能には次のようなものがあります。
セマンティックHTML
Drupalは、セマンティックなHTMLマークアップを利用してウェブサイトのコンテンツを構造化します。
つまり、見出し(<h1> ~ <h6>)、段落 (<p>)、ナビゲーション要素 (<nav>) など、各セクションの意味と目的を明確に定義するHTML要素が使用されます。
この構造化により、スクリーンリーダーなどの支援ツールがウェブページの情報を正しく読み取り、ユーザーは正確な情報を得られます。
レスポンシブデザイン
Drupalテーマはレスポンシブ対応しているため、さまざまな画面サイズやデバイスに最適化されて表示できます。これは、特定の表示要件を持つモバイルデバイスや支援技術を利用するユーザーに対応します。
レスポンシブ対応したウェブサイトでは、小さなスマートフォンでも大きなパソコン画面と同様にコンテンツの可読性が高く、サイト内のページ移動も容易にできます。
画像の代替テキスト
Drupalでは、コンテンツ作成時に画像の説明的な代替テキストの入力が必須とされています。代替テキストは、視覚障がいがありスクリーンリーダーを使用しているユーザーにとって非常に重要です。
適切な代替テキストは、画像のメッセージや目的を正確に伝え、より広いユーザーがコンテンツを利用できるようにします。
Drupal のアクセシビリティモジュール
Drupalはコアに標準的なアクセシビリティ機能を搭載していますが、Drupalの真の強みはその広範なコミュニティと、Drupalが提供する豊富なアクセシビリティモジュールにあります。
最新バージョンのDrupal10は、様々な障がいを持つすべてのユーザーの使用パターンを念頭に置き、ウェブサイトを機能的でアクセスしやすいものにする広範な標準機能とモジュールを提供します。
これらのモジュールはさまざまなニーズに対応し、Drupalウェブサイトの使いやすさを大幅に向上させることができます。人気のあるDrupalアクセシビリティモジュールをいくつか紹介します。
Editori A11y Accessibility Checker
このモジュールは、コンテンツ作成・編集者を対象としたアクセシビリティチェッカーです。Drupalの標準エディタであるCKEditor内のアクセシビリティの問題をスキャンします。問題箇所を特定するだけでなく、修正方法も提供されるので、アクセシビリティガイドラインに準拠したコンテンツを作成するのに非常に役立ちます。
Block ARIA Landmark Roles
このモジュールは、ARIA (Accessible Rich Internet Applications) ランドマークロールやラベルをウェブサイト上のブロックに割り当てることができるため、スクリーンリーダーやその他の支援技術が特定のコンテンツの種類と目的を識別しやすくなります。これにより、このようなテクノロジーを使用するユーザーがページ構造をナビゲーションしやすくなります。
Automatic Alternative Text
このモジュールは、Microsoft Azure Cognitive Services APIを利用して画像の代替テキストを自動的に生成します。
前後の文脈を考慮した代替テキストは作成できませんが、特に画像が多いウェブサイトの場合、自動化により初期段階の時間を節約することができます。
まとめ
2024年4月の法改正により、ウェブアクセシビリティは企業にとって重要な焦点となっています。CMSの導入自体がアクセシビリティ対応を完全に実現するわけではありませんが、適切なCMSの選定とカスタマイズ、運用ルールの策定などを組み合わせることで、アクセシビリティ対応を効率的に進めることができます。
アクセシビリティ対応は、ユーザーの拡大、SEOの向上、法的リスクの回避、そしてブランド価値の向上など、多くのメリットをもたらします。これらの取り組みは、ビジネスの持続可能性と成長に不可欠です。
ウェブサイト担当者は、アクセシビリティに焦点を当て、障害を持つユーザーを含め、誰もが利用しやすいウェブサイトを目指しましょう。